躍進する新民主党に、批判のボルテージを上げるプレンティス首相 [アルバータ]
4月30日にCBCテレビが発表した、リターン・オン・インサイト社による政党党首支持率調査は、新民主党のレイチェル・ノトリー党首38%、ワイルドローズ党のブライアン・ジーン党首34%、進歩保守党のジム・プレンティス党首31%となり、当初予想された与党楽勝ムードは一変、新民主党の急上昇により3党デッドヒートの様相を呈している。
アルバータは保守の牙城であり、連邦議会選挙ではほぼ全ての議席が保守党のものとなる。州政治においても、アルバータ進歩保守党政権が43年半も続いている。しかし保守の本拠地カルガリーで2010年、革新のナヒード・ネンシが市長選に当選するなど、都市部では革新勢力も存在する。16より多くの議席を獲ったことのないアルバータ新民主党は、テレビ討論を契機として支持率を急上昇させ、いまや政権を奪取する勢いを見せている。
テレビ討論で法人税について議論していたプレンティス首相が、ノトリー党首に向かって「数学は難しいということを、私は知っている」と言ったことが、波紋を呼んでいる。
マウント・ロイヤル大学で政治学を教えるデュエイン・ブラット教授は、次のように述べた。
「この発言は、尊大なエリートのプレンティスがノトリーに、自分がいかに数学が得意かを『マンスプレイニング(※女性を無知だと侮るかのように男性が得々と説明すること)』した出来事として、彼のキャリアが続くかぎり付きまとうだろう。」
引退した進歩保守党のダグ・グリフィス元議員は、こう解説した。
「同じ発言をジーン党首に言っていたら、誰も何も言わなかっただろう。だが彼は、それをノトリー党首に言った。それは、女性を侮るように聞こえた。私は首相をよく知っているが、彼はそんな嫌味を言うような人ではない。」
ノトリー党首自身は、首相の発言を女性蔑視や見下されていると感じたかと問われ「いいえ、全然」と答え、意に介さないそぶりを見せた。
リターン・オン・インサイト社のブルース・キャメロン社長は、ノトリー党首をこう評した。
「レイチェル・ノトリーの選挙運動は非常に精力的で、ジャック・レイトンを髣髴させる。支持政党に関係なく、多くのアルバータ州民は、新民主党が過去最高の運動を展開していると感じている。」
ノトリー党首は、こう演説した。
「人々は、異なった何かを求めている。彼らは、代案を求めている。彼らは、教育とヘルスケアを保護し、仕事を確保するという要望を代弁する政治を求めている。私は、今の政治家たちがこれらを成し遂げるとは思わない。」
プレンティス首相は、世論調査についてはコメントせず、選挙戦も終わりに近づくと、新民主党に批判を集中させた。
「新民主党が与党になれば、予算は赤字になる。それから法人税を増税し、石油ロイヤリティを値上げして、景気を悪化させるだろう。」
さらに彼は、こう演説した。
「(ケベック人の)マルケア党首によって作られたかのようなパイプライン政策は、この州では必要ない。」
だがノトリー党首は、これを一笑に付した。
「それは完全に間違っている。私はもう何か月も、マルケア党首と話していない。私はアルバータ州民から、方針を得ている。」
プレンティス首相はなおも新民主党への批判のボルテージを上げ、この選挙は「自由な企業活動のアルバータか、それともこの州を間違った方向に導く新民主党かの選択」であると言い、さらに「アルバータは新民主党の州ではない」と意味不明の発言まで飛び出した。
ノトリー党首は、余裕たっぷりに反論した。
「アルバータがどんな州であるかを決めるのは、アルバータ州民だ。」
「もし彼が、自分が尊大だというイメージを忘れさせる目的のために、人々が何でありまたは何でないかについて語っているのだとしたら、彼はあまり有能ではないと思う。議論は根拠のないただの悪口に変わっている。それは、私が取るべき戦略ではない。」
図:「私にも彼女と同じものをちょうだい。」左はオンタリオ新民主党のアンドレア・ホーバス党首、右はアルバータ新民主党のレイチェル・ノトリー党首。
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