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フランコフォニー事務総長にジャン前総督 [総督]

 フランコフォニー国際機関は11月30日、セネガルのダカールで開催されたサミットで、カナダのミカエル・ジャン前総督を次期事務総長に指名したと発表した。11年務めたアブドゥ・ディウフ事務総長(セネガル元大統領)退任にともない、5人の候補が立候補していたが、ジャン氏は初の女性事務総長となる。任期は4年。
 ジャン氏は「フランコフォニーのために日々奉仕している皆さんとともに働けることに、私は胸を躍らせています」という声明を発表した。
 カナダからはカナダ連邦のほか、ケベック州とニューブランズウィック州もフランコフォニーに参加している。連邦のハーパー首相は、ジャン氏に祝辞を述べた。
「カナダの市民である前総督ミカエル・ジャン氏が、フランコフォニーの次期事務総長に就任することを、全てのカナダ人は誇りに思う。彼女が新しい職務を、その優秀さをもって果たすことを、私は少しも疑っていない。」
 首相は記者に、カナダが二言語主義であるがために、英語を話せるという特性がフランコフォニーにおいて有利になることはあるだろうかと問われると、これを否定した。
「フランコフォニーは、フランス語というただ一つの言語で運営されていくだろう。あたかもコモンウェルスが英語だけで運営されるように。」
 ハーパー首相は、次期事務総長指名に至る話し合いの詳細について説明することを拒否した。だがフランスのフランソワ・オランド大統領は、一致を維持していくために投票を避け、話し合いで選出したことが重要だと記者団に語った。
 ケベック州のフィリップ・クイヤール首相は、ジャン氏をこう評した。
「ミカエル・ジャン氏は、フランコフォニーの新しいビジョンの体現者である。現代的、若くてダイナミックだ。」
 ニューブランズウィック州のブライアン・ギャラント首相は、ジャン氏の多文化的背景について言及した。
「ハイチ人、フランス人、カナダ人、ケベック人そしてアカディア人であることが、ミカエル・ジャン氏のアイデンティティである。彼女の母方のアカディアの血縁に感謝する。この広い文化的背景が、彼女にフランコフォニー理解の手助けとなるだろう。彼女こそが、フランコフォニーの多様性を体現する。」
 デビッド・ジョンストン現総督も、声明を発表した。
「彼女がフランスの言語と文化だけでなく、加盟国を結びつけている平和と民主主義と人権をも熱心に守っていくことを、我々は確信している。」

 フランコフォニー参加国の大半はアフリカで、ジャン氏は黒人だがアフリカ出身ではない。またEUは2009年5月にアザラシ製品取引を全面的に禁止したが、ジャン総督はその直後にヌナブートを訪問した際、アザラシ解体に立会いその心臓を食べている。そのためジャン氏の事務総長就任には、フランス・ベルギーなどEU勢の反発があったものと思われる。だがジャン氏は、バンクーバー・オリンピックで開会宣言するなど抜群の知名度があり、またカナダがフランコフォニーで2番目の大口資金提供者であることが、有利に働いたようだ。

 ミカエル・ジャン氏は、1957年ハイチのポルトープランスに生まれた。デュバリエ独裁政権下で迫害を受け、1968年カナダに移住し、モントリオール大学などで学んだ後CBCのジャーナリストとして活躍した。
 2005年から10年までカナダ総督を務めたが、その間2008年には、議会で過半数を占める野党がハーパー政権を打倒しようとした「政治危機」が起こり、ジャン総督は大方の予想に反し議会を停会してハーパー政権を救った。このとき、ハーパー首相からジャン総督へ相当な圧力がかかったものとみられている。また首相は総督の任期を一期だけ延長できるが、ハーパー首相はジャン総督の任期を延長せず退任させたため、両者は不仲だと言われている。
 ジャン氏は総督退任後は、ユネスコ特使やオタワ大学学長を務めている。
 夫は映画監督のジャン=ダニエル・ラフォン氏で、彼女も何本か映画を製作している。
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