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カナダ、TPP交渉参加を表明 [経済]

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 ホノルルで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に参加したハーパー首相は、11月14日にアメリカのオバマ大統領と首脳会談を行った後、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への参加を表明した。また同日、NAFTA(北米自由貿易協定)加盟国のメキシコも参加を表明した。日本・カナダ・メキシコの3か国が参入すれば、世界のGDPの35%をも占める巨大な自由市場が形成されることになる。
 カナダとメキシコの参加表明について、オバマ大統領は「日本・カナダ・メキシコのTPP交渉参加を歓迎する。アメリカで数万人の雇用を創出する画期的な出来事だ」と評価した。高い失業率に悩むオバマ大統領にとって、2012年大統領選での再選は厳しい。彼は貿易拡大による雇用創出に、勝機を見出そうとしているようだ。ハーパー首相は参加に転じた理由について、「オバマ大統領から極めて強く参加を求められた。12日の大枠合意の内容も、カナダは容易に適合できる」と説明した。
 実はカナダは、2010年10月にもTPP交渉に参加しようとしたが、酪農を保護するカナダはニュージーランドの乳製品を警戒し、関税撤廃の例外品目に指定するよう求めたため、参加を拒否された経緯がある。エド・ファスト国際貿易大臣などは2日前に、「TPPがカナダの国益になると確信できたときにのみ交渉に参加する」と述べ、無関心を装っていた。

 カナダの唐突な参加表明は、各方面で様々な憶測を呼んでいる。ナンヤン理工大学(シンガポール)のデボラ・エルムス教授は、こう推測した。
「ホノルルで何があったのかは、いまだ不透明なままだが、私の考えは、アメリカが単独で日本と交渉することを望まなかったということだ。それでアメリカは、カナダとメキシコに参加を要請した。オバマ大統領は、酪農・養鶏業を保護する障壁を維持できる何らかの保証をカナダに与えたのではないか」。
 カナダの元外交官コリン・ロバートソン氏は、「キーストーンXLが転換点だったかもしれない」と説明した。
 アメリカは10日、アルバータ州の原油をテキサス州などの製油所に運ぶ「キーストーンXL」パイプライン計画の凍結を一方的に発表した。するとジム・フラハティ財務大臣は11日、パイプライン計画凍結によって、カナダは石油市場をアジアに求めることになるだろうと述べた。
 だがカナダで生産される石油と天然ガスは、その100%がアメリカに輸送されている。またカナダの輸出の75%が、アメリカ向けのものである。成長著しい中国への輸出は、わずか3.3%にすぎない。ロバートソン氏は「地理的条件を変えることはできない。アメリカは依然として、カナダ最大の市場である。カナダはアメリカを捨て去るわけにはいかない」と語った。

 オタワで酪農を営むピーター・ルイターさんは、次のような見通しを語った。
「アメリカは、綿花の保護を望むだろう。日本は、米の保護を望むだろう。どの国も保護したい何かがあるから、カナダの酪農業もきっと生き残れるはずだ。」
 カナダは、穀物・油料種子・牛肉・材木・パルプでは強みがあるが、乳製品と鶏肉は例外品目としたい。いっぽう日本が死守したい品目は、米・牛肉・簡易保険である。特に米は、関税率が778%にものぼっている。ところがカナダの自動車関税率は6.1%と、アメリカの2.5%に比べ高いものになっていることから、カナダのTPP参加は日本にとって悪い話ばかりでもなさそうだ。カナダが日本と協調して、アメリカに関税撤廃の例外品目を認めさせる展開も十分考えられる。
 経団連の米倉弘昌会長は15日、「カナダ・メキシコに先駆けて、日本が参加表明できたのは非常に良かった」と評価した。日本の参加表明によってTPPの意義は格段に大きくなり、早期に参加しなければ巨大市場のルール作りに参加できなくなり、参加が遅れればすでに作られたルールを一方的に押し付けられることになるからである。

 TPPは2005年、「P4」と呼ばれるブルネイ・チリ・ニュージーランド・シンガポールの4か国によって形成された。カナダも参加を要請されたが、この時点では世界のGDPの0.9%でしかなく、参加を辞退した。
 2010年、TPPはアメリカ・オーストラリア・マレーシア・ペルー・ベトナムの5か国が参加したことによって、世界のGDPの27%を占める巨大市場に拡大した。カナダもこのとき参加を表明したが、拒否された。
 そこへ日本・カナダ・メキシコの3か国が参入すれば、世界のGDPの39%を占める市場が形成されることになる。さらに、韓国とフィリピンも参加するものと推測されている。
 カナダは韓国とのFTA(自由貿易協定)締結に失敗しており、TPPはアジア市場に手っ取り早くアクセスできる頼みの綱である。
 カナダは国民皆保険制度を敷いており、NAFTA締結後もそれを維持している。国民皆保険制のカナダが参加を表明したことで、「日本がTPPに参加すれば国民皆保険制は瓦解する」という反対論は、その論拠を失うことになる。


図:「チャイナ・シンドローム」 地球の裏からコンニチハ。
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