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思い出をありがとう、バンクーバー [バンクーバー五輪]

3542074 少ない降雪、整氷車の故障、そして開会式での大失敗。リュージュ選手の死から始まったバンクーバー・オリンピックは、開幕するとまもなく「史上最悪のオリンピック」と言われるようになった。もしアイスホッケー決勝でカナダが敗れていたら、バンクーバー・カナックスがスタンレー・カップ決勝で敗れ、暴動が発生した1994年の悪夢が繰り返されたかも知れない。
 だがカナダは、延長戦でついにアメリカを下し、予選で敗れた雪辱を晴らした。そしてカナダは、史上最多の14個の金メダルに輝いた。
 汚名を返上したのは、ホッケーだけではない。閉会式冒頭で、電気技師に扮したパントマイマーのイブ・ダジュネさんが、コンセントをつなぎ忘れたふりをして電源を入れ、開会式では上がらなかった4本目の柱を引っ張り上げるパフォーマンスを見せ、失敗を笑いに変えた。それから点火しそこなった「悲劇のヒロイン」カトリオナ・ル=メイ=ドーンさんが聖火をともすと、会場に歓声があがった。

3542077 バンクーバーは選手やスタッフにとって、感慨深い思い出の地になったことだろう。バンクーバーはまた、私の第二のふるさとでもある。私にも、志を抱いて熱く生きた思い出がある。バスに乗る金がなく自転車で各地の図書館を駆け巡り、新聞連載を夢見て原稿を書き、新聞社を訪問しては片っ端から断られていた日々を、忘れることはできない。
 そしてカナダは、私にやり直すチャンスを与えてくれた。あきらめないこと、挑戦し続けることの大切さを、教えてくれた。

 カナダ人はいつも“sorry”と言っているのだという。本当だろうか。時間にはルーズ、失敗しても気にしない、そんなヌルくてeasy-goingなカナダ気質が、時には苛立たしく、時には心地良かった。

3542076 開会式で柱が1本上がらず、ル=メイ=ドーンさんにとんだ恥をかかせてしまった総合演出プロデューサーのデビッド・アトキンス氏は、「誰もが人間なのだから、こういう失敗もある。世界にいいメッセージを伝えられたと思っている」と真顔で語った。その彼は今日「汚名をそそぐ必要なんてない。間違ったことはしていないから」と言って笑った。

 失敗してもいいじゃないか。1番でなくてもいいじゃないか。挑戦し続けよう。
 ありがとう、カナダ。ありがとう、バンクーバー。



写真上:柱を持ち上げるふりをするイブ・ダジュネ。
写真中:聖火台に点火するカトリオナ・ル=メイ=ドーン。
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