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世界最古の岩石発見 [科学]

 ケベック州ハドソン湾東岸地域で42億8000万年前にできたとみられる岩石を発見したと、カナダ・マギル大学とアメリカ・カーネギー研究所のチームが9月26日発行の科学誌「サイエンス」に発表した。これまで知られている最古の岩石は、カナダ北部で見つかった40億3000万年前のもので、今回の発見はこれを2億5000万年さかのぼり、世界最古。研究チームは、46億年前の地球誕生から間もない時期にできた地殻と見ており、この発見で、地球に安定した地殻が最初に現れた年代が、これまでの想定より3億年ほどさかのぼる可能性が出てきた。

 地球は約46億年前に誕生した後、「マグマの海」と呼ばれる高温の状態が続き、冷えて固まっていく過程で地殻ができたと考えられている。しかし地殻がいつどのようにできたのかは謎だった。
 「今回の岩盤が40億年以上前の地殻と同じ年代のものかどうかはまだ定かではなく、さらに分析を進める必要がある」
と、研究チームメンバーでワシントン・カーネギー協会の地球化学者リチャード・カールソン氏は語るが、これほどまでに古い岩が存在するとなると、地球は早期から地殻が形成されるほどに冷えていたという、かつて議論を呼んだ説が裏付けられることになる。そして、地殻の形成は小惑星や彗星の激しい衝突がやんだ38億年前まで起こらなかったとする説は、覆されることになるだろう。

 このハドソン湾の岩盤は、コロラド大学ボルダー校のニコール・ケイツ氏とスティーブン・モイジッシュ氏によって2007年に約38億年前のものと判断されている。このときには、岩盤から採取したジルコンの小片内に見つかったウラン放射性同位体の崩壊に基づく年代測定が行われた。この手法は、世界中の古い岩の年代を測定する際に広く用いられている。
 だがその後、マギル大学のジョナサン・オニール氏とドン・フランシス氏によって、ハドソン湾から38億年を超える歴史を持つとみられる岩石が採取された。そこで同氏は、前出のカールソン氏と共同でこの岩石の分析を進めたのである。
 研究チームが注目したのは希土類金属のサマリウムやネオジムの同位体、つまり原子構造の相違だった。ネオジムの同位体の1つは、サマリウムの同位体が崩壊するときに形成される。このサマリウムの同位体は、太陽系の誕生直後にのみ存在していたものだ。
「このネオジムの同位体の存在量のばらつきなどを検討したところ、42億8000万年前という測定結果が得られた」
とカールソン氏は語る。

 これに対して、コロラド大学ボルダー校のモイジッシュ氏は次のように述べている。
「岩石自体が古いのではなく、この岩石が42億8000万年前の土砂から形成された可能性もある。岩石の中にはさらに古い岩石から形成されるものもあるからだ。現在、ハドソン湾周辺で42億8000万年前のジルコンを含む岩石を探しているが、それが見つかればさらに解明が進むだろう。その結果、やはり岩石自体が42億8000万年前のものと判明すれば、地球の歴史上最古の冥王代から存在する唯一の地殻の一部ということになる」。
 複数の岩盤(プレート)で構成された地表がマントルに乗って動くという、プレートテクトニクスのプロセスの中で、地球の地殻の大部分は繰り返し押しつぶされ、溶解しては再形成されてきた。
「こうしたシステムがいつ始まったのかを解明するために、いまも地質調査が活発に行われている。ハドソン湾の岩盤に関する調査は、初期の地球にダイナミックな岩石の循環や火山活動があり、非常に早くから地殻が形成されたとする説を支持するものになる」
と同氏は語っている。
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